タンクローリーの運転手になる前に知りたい!メリット・デメリットと給料事情
当ブログ筆者の私は、現役でタンクローリーの乗務員として働いています。
ライチさん、タンクローリーの仕事はどんな感じですか?
身体への負担が少ないから歳をとっても続けやすいし、慣れれば楽な仕事だよ
ただし規則は厳しいね
あと、人によって向き不向きがある
でも個人的には、大型トラックの仕事のなかでは、とくにオススメしたい仕事だよ
皆さんは、タンクローリーと聞くと、どんなトラックの印象があるでしょう?
液体の製品を運ぶための、タンクを積んだトラックですよね
タンクローリーの積荷は様々あって、
- 化成品(ケミカル)
- ガソリンや灯油などの燃料
- ガス
- 食品
- 水(工場からの廃水なども)
- セメント
- 製粉
こういった液体や粒状の製品を、一度に大量に運ぶことができます。
ほかにも牛乳や液糖やチョコレート、ヤク◯トといった生活に馴染みのある液体製品もタンクローリーが運んでいます
ちょっと変わったところでは、温泉のお湯を運ぶタンクローリーもあったりしますよ
地震や台風に遭った被災地で見かける給水車も、タンクローリーだったりしますよね
この記事では、タンクローリーの仕事のメリット、デメリット、給料などについて解説していきます。
タンクローリーの仕事について
タンクローリーと聞くと、巨大な車両でガソリンや化学薬品を運んでいる姿をイメージするかもしれません。
確かにその通りですが、実際にタンクローリーの仕事がどんなものか、詳しく知っている人は少ないかもしれませんね。
タンクローリーのタンクの上にあるマンホール(ハッチ)を開けた状態。
液体がタンクに充填される作業中は、オーバーフロー(タンクの容量以上に積んで液体が外に溢れ出す状態)しないように監視を徹底します。
設備に合わせた接続金具を用意して、タンクローリーとお客様の設備を液送用のホース(フレキ)で接続します。
液漏れがないように、日頃からパッキンの点検や、ホースの根本部分(長年使っていると、負荷のかかるこの部分が一番漏れが出てくる部分になる)の点検も欠かせません。
タンクローリーはどんなトラック?
タンクローリーは、液体やガスを運ぶための特別なトラックで、車体に大きなタンクが取り付けられているのが特徴です。
タンクの中には、防波板(ぼうはばん)という仕切りが設けられていて、運転中に液体が揺れて車両が不安定にならないように工夫された作りになっています。
この防波板の有無でタンク内部がどうなるか、わかりやすいYouTube動画がありました。
タンクローリーの仕事とは?
タンクローリーの運転手の主な仕事は、液体やガスを安全に目的地まで運ぶことです。
これだけ聞くと、
普通のトラック運転手とあまり変わらないんじゃない?
と思うかもしれません。
ですがタンクローリーは、運搬する製品が危険物の液体であることが多いため、とくに慎重な運転が求められます。
急ブレーキや急カーブは、液体がタンク内で揺れてしまうのでNG。
常にスムーズな運転を心がけなければなりません。
一度、事故を起こしてしまうと、
首都高で横転して炎上したタンクローリーの事件のような、記憶に残るほど大きな事故になりかねないですよね
また、荷物の積み込みや卸し作業も、工場によってルールや作業手順が細かく決められていることが多いです。
タンクローリーでは、ホースを使った液送作業によって製品の積み卸しを行いますが、これに慣れるまでは場数をこなす必要があります。
そのため、入社してからの横乗り期間がどうしても長くなりがち(平均3ヶ月)です。
どのようなスキルや資格が必要?
タンクローリーの運転手になるためには、
- 大型免許
- 牽引免許(トレーラータイプの大型タンクローリーの仕事をする場合)
- 危険物取扱者乙種第4類(危険物を運ぶ場合)
- 毒劇物取扱責任者(運ぶ製品によって必要)
- 高圧ガス移動監視者(ガスローリーの仕事をする場合)
こういった資格が必要です。
安全運転の技術や、危険物の知識も欠かせません。
タンクローリーの運転手は、高い注意力が求められます。
日々の運転でも常に気を配る必要があります。
一日の仕事の流れは?
タンクローリーの一日の仕事の流れです。
まず出勤時間は、
- 午前2時〜5時 (早朝の荷積みや、中距離程度の運行がある場合)
- 午前6時〜8時 (地場仕事のときはこれくらいの出勤時間が多い)
だいたいこんな感じになります。
2024年問題以降、一日で働けるのは最長でも15時間以内になるため、
何時に出社して、何時頃に帰社するかを想定して、その日のドライバーのスケジュールを配車係が設定します。
【朝(早朝)】出社〜乗務前の対面点呼、車両の点検
① 出社したら、点呼の係員と乗務前の対面点呼(健康状態の確認。免許証や仕事に必要な資格証の携帯の確認。アルコールチェックなど)
② その日に乗務するトラックの車両点検
③ 車両点検後に異常無しの報告をおこなう。当日の運行スケジュールとルート確認。
④ 忘れ物がないか確認して出発。
【昼】積み込み〜納品、次の日に納品する製品の宵積み
① 朝イチの仕事は、燃料系のローリーは油槽所で朝積み。ケミカル系ローリーの場合は前日に積み込んである製品を朝イチに卸しに行くことが多いです。
② 定められた休憩時間を挟みながら、昼間の運行をおこなう。
③ ケミカル系のローリーは翌日の納品分を前積みして帰社。
【夕方】帰社〜乗務後の対面点呼
① その日の業務を終えて帰社。
② 運行を終えた車両の点検。
③ 点呼カウンターで対面点呼(アルコールチェック、明日の業務の確認など)
④ 退社
残業があっても、だいたい17時や18時には仕事を終えて帰宅する場合がほとんどです。
タンクローリーの仕事のメリット・デメリット
では、タンクローリーの仕事のメリットとデメリットを採り上げていきます
タンクローリーの仕事のメリット
- 車体の長さが4tトラックとほぼ同じ(意外と大型トラックの初心者さんにオススメできます)
- 長距離運行で帰り荷を積まずトンボ帰りできる
- 納品先では車両ごとに着時間が指定されている場合が多く、その時間は卸し場を空けてくれているので、待機時間なくスムーズに卸せる
- 荷物の荷締め作業なし、荷崩れ、雨濡れといった心配もない
- タンクローリーの吐出口と先方の受け入れ口をホースで繋ぐだけの作業なので、身体への負担が少なく、歳を重ねても続けやすい
- 資格が必要な仕事なので、まともで紳士な大人が多い(頭がちょっとアレな人や、おかしな人は見たことはない)
とくに私がメリットに感じているのは、「帰りの荷物」を考えなくて良いことですね
タンクローリーのタンクには、異なる製品を積めない事情があるので、基本的に納品が終わったら、そのまま真っ直ぐに会社へ帰ります。
(例:アルコール用のタンクにはアルコールしか積めないため)
このことから、タンクローリーの運送会社は、荷主から往復分の運賃と高速道路料金をいただいています。
ここが一般貨物の運送会社との違いですね
一般貨物のトラックの仕事は、基本的に荷主からは片道分の運賃しかいただかないので、長距離運行のときは、行き先の地域で帰りの荷物を手配してもらわないと採算が合わないんです。
帰り荷が決まっていて、すぐに積むことが出来ればいいのですが、
水屋(貨物利用運送業者)を通して荷物を手配してもらう場合は、数時間もの待機をさせられることも普通にあります。
ようやく水屋から携帯に連絡がきて、
お待たせしましたー
◯◯の◯◯に向かってもらえますか?
ドライバーさんの名前と車番を先方に通してますので、受付に行ってもらえたら対応してもらえます
また積み込み終わりましたら、弊社の私の方までご連絡ください
こんな感じで指定された会社の倉庫等に案内されて、荷積みします。
荷物はパレット積みなら良いのですが、扱ったことのない製品をバラ積み(手積み)することもあり、心身ともになかなか疲れます。
タンクローリーの仕事のデメリット
- 朝が早い。目覚ましを毎日使って早起きしないといけない
- 入社から独り立ちするまでの横乗り期間が長い(約2〜4ヶ月)
- ルールや規律を厳しく守れない人には務まらない
- 危険物を扱うので、重大な事故につながるリスクがある
- 危険物の資格の更新と講習を、3年に1度受けなければいけない
- タンクローリーを扱う会社は港湾の近くにあることが多く、地域によっては会社を選ぶことができない場合がある
入社したらまず、最初の3ヶ月を乗り切れるかどうかが、この仕事をやっていけるかどうかの分かれ目になります。
行き先ごとの構内ルールに従いながら、複雑な作業をおこない、覚えないといけないことも多いので、細かくメモ書きすることはまず必須です。
最初は先輩の作業を見ていても何をしているのか理解が追いつかないし、横乗りのコミュニケーションで気を遣うしで、この時点で嫌になって辞める人は普通にいます。
運送業界の経験豊富なベテランの運転手でも、全く物にならず辞めていくことも普通にあります。
私が見ていて長く続く人の特徴は、素直に教えられたことを自分で再現できるようにメモしていける真面目な人です
箱車の経験が長い人とか、変に業界に染まって知恵が付いている人ほど、逆にそれが足枷になって馴染めないこともあります。
まさに最初の私がそうでした(笑)
箱車とは全く異なるジャンルの仕事と考えて、イチから学び直す気で取り組まないといけません
物を雑に扱ったり、面倒くさがりな性格の人にはまず合わない仕事です。
どんな人がタンクローリーに乗っているの?
専門性が高い仕事ですが、運送業の経験が豊富でなくても大丈夫です。
タンクローリーの運転手は、未経験からでも転職可能です
実際に、異業種から転職してきて立派に独り立ちしている人も多数います。
- コロナ禍で解雇されたホテルマン
- 人と接する仕事に疲れた営業マン
- 工場作業員
こういった人が私の会社にもいます
さまざまな事情で転職してきて、現在は一人で立派にローリーに乗っている人が、私の勤める会社では多数います。
荷積み荷卸しにそこまで力は必要ないので、女性も活躍されていますよ。
私は以前は工場勤めで、タンクローリーの荷受けの立ち合いなどをしていました
そのタンクローリーの運転手さんに誘われて入社、最初は大変でしたが先輩方には丁寧にご指導くださり、異業種から来た自分でも見極めテストに合格し独り立ちできました
ただ、40〜50代以上の方で転職を目指すとなると、最低でも大型免許の資格を取得しておくのが転職の条件となりそうです。
しかし20代なら、資格がまだなくても若いというだけで資格取得のサポートをしてくれる会社もあります。
免許や資格取得のサポートをおこなっている会社は、ホームページでそれを公表していることがあります。
もし気になる企業が見つかったら、直接問い合わせてみるのも効果的です
電話で問い合わせてくる若者というだけで、やる気のある有望な人材と判断されて、面接まで案内されることは普通にあると思いますよ。
とくに狙い目は、中小の運送会社ですね。
大手の企業だと対応が分かれそうですが、中小企業の管理職や採用担当には体育会系の気質をもった人も結構います
「熱意」と「積極性」を見せればワンチャン採用までいける可能性はありますよ
業界では、若年層の成り手があまりにも不足している事情があり、年齢が若いほど、採用してもらえる可能性があります。
気になる会社があれば、
ホームページをチェック→扱っているトラックや仕事を確認→電話してみる
メールだと返事が返ってこない場合があるので、電話で「ここで働きたい」という積極性を見せるのが効果的です
タンクローリーの仕事の給料はどれくらい?
タンクローリーの運転手の給料は、働いている地域、経験や仕事内容、雇用形態などによって異なりますが、運送業の給与としては比較的に高めだと思います。
一般貨物を運ぶ運送会社よりも給料が高い理由として、
- 危険物の資格が必要(水など危険物資格が不要な仕事もある)
- 規則が厳しい(長袖服装や保護具着用の徹底。作業手順を遵守など)
- 一般貨物を運ぶ運送会社と比べて、競合他社が少ない
といったことが挙げられます。
どこの会社でも簡単にできる仕事ではないので、一般貨物のように値下げ競争によって仕事を取り合うことがあまりない業界です。
空車で走らせるよりはマシ…と、バグったような安い運賃で仕事を請ける(ダンピング)のがまかり通っている一般貨物のような風習はありません
ほぼ適正な運賃で、無理なく危険物を運搬しています
年収
タンクローリーの運転手の年収は、400万円〜600万円ほどになります。
賞与(ボーナス)は、わりとしっかりと出す会社が多い印象。
私は主にケミカルのローリーを担当していますが、それほど忙しくなかった月でも、手取りで30万円を下回ることはないです
経験を積んだり良い会社を選べば、さらに高い収入を目指すことも可能です。
大手企業の危険物を扱う仕事で稼げるルートに当たれば、
年収が700万円ほどになることもあります。
ただし、労働時間も収入に伴ってそれなりに長くなる場合があります。
この700万円あたりが、タンクローリーの給料の限界値になるんじゃないかと思います
しかし、牽引免許があれば、
トレーラーで積載タンク(トレーラーのシャーシにタンクが積載されたもの)を輸送する、タンクトレーラーの仕事(20トン以上の輸送能力)もあります。
この仕事をこなせるようになれば、700万円以上稼ぐことも可能です。
まとめ
タンクローリーの仕事は、繊細な技術や慎重な作業が求められます。
運転の技術や危険物の知識、そして安全への意識が求められる仕事で、誰にでも務まる仕事ではありません。
ですが、その分やりがいも大きく、運送業としては比較的に高い収入も得られます。
何よりも、日々の仕事を通じて自分自身の成長を感じられるのが、この仕事の魅力です。
焦らず自分のペースで着実に進んでいけば、きっと素晴らしいタンクローリーの運転手になれると思います。
今回の記事で、タンクローリーの仕事に興味をもってくださった方が、この業界の門を叩いてくれると嬉しいです
私も同じ業界の仲間です
タンクローリーの仕事は、日本経済にとってなくてはならない輸送業務で、やりがいがありますよ
ではまたっ、ピース!